仲秋の名月のお月見を、なんとも荒々しい光景のなかで楽しめるスポットが、中国南部にある。杭州湾に注ぐ銭塘江の河口である。銭塘江の河口は、幅が百キロほどもあるのだが、ここで、仲秋の名月の日の満潮時に、巨大な潮津波が起こるのだ。潮津波というのは、満潮時に海水が川を逆流する現象のことである。満月の日は、いうまでもなく、潮の干満の差が大きくなる大潮の日でもある。仲秋の名月の日、満潮が近づくにつれ、海面は潮位を徐々に高めながら河口に迫り、海に流れこんでくる川の水の水位より高くなって、川の水の上に海水が覆いかぶさるような形になる。銭塘江の河口近くは、海と河口の高低差がほとんどなく、平坦に近い。それで、海水は、川の水の上に乗るようにして、どんどん逆流する。川幅は上流にいくほど狭くなるので、逆流する海水は波となって岸辺に打ち寄せては跳ね返り、どんどん波の高さが高くなっていく。このような潮津波の起こる川は、世界にたくさんあるのだが、銭塘江はずば抜けて規模が大きい。なにしろ、波の高さは七・五メートルほど、潮の流れは、最大時には時速二十七キロほどにもなるのである。ときには水害ともなる潮津波だが、現地の人々は、古代から、堤防をつくって潮津波に備える一方で、「観月観潮」の年中行事を行なってきた。現代でも、仲秋の名月には、お月見と潮津波の見物を同時に楽しむ人々がこの地に集まるのだが、毎年何人か、高波にさらわれて行方がわからなくなる人がいるそうである。
「アメリカの公衆電話のかけ方がよく分からない。この前もロスの空港から、友人に市内通話したらオペレーターが早口で何か言う。お金を入れればいいと思ってドンドン入れると、終わってもおつりが戻らない。そうかと思えば、すぐ通じる時もあって何が何だかサッパリ分からない」という旅行者がいる。海外旅行にはこの手の聞くに聞けない現地の疑問というのが結構ある。どうしてこんな事態が起こってしまうのだろう。アメリカの公衆電話のかけ方は、日本と同じだ。まず?受話器を取る。?クォーターと呼ばれる25セントコインを入れる。?相手の番号を回す、の順でいいのだが、必要以上にコインを入れてもお金は戻ってこない。その仕組みにまず注意しよう。通話には市内通話(ローカルコール)と市外通話(ロング・ディスタンスコール)の2種類がある。ところがおかしなことに、同じ地域局番でも場所によっては長距離通話と見なされたり、逆に長距離区域でも隣接していると市内通話でかかることもあるのだ。
防長二国(周防・長門)は維新の立役者だったにもかかわらず、萩に県庁所在地がないのかと誰しも疑問に思う。しかし、毛利家は最初から辺境の萩などに居城を置きたくなかった。関ヶ原の敗戦でコー○万石の太守から防長二国に押し込められた毛利藩が希望した居城建設地は、防府の三田尻か山口の鴻之峯だったが、幕府は日本海側の萩を強いた。幕末には俗論派(保守派)と正義派(改革派)の政争の中で正義派は山口により、藩の政庁も山口と萩を行ったり来たりして、正義派の最終的な勝利によって萩は維新を待たずして廃城になった。現在の山口県庁は、幕末の政庁を引き継いでいる。政庁の正門、大正年間(一九一六年)に建設された旧県庁、そして新庁舎が同じ敷地の中に並んでいるという珍しい風景である。山口には中世の名族、大内氏の居館があった。大内氏は京風の文化を愛し、応仁の乱の際には多くの公家たちも戦乱をこの地に避けた。